空手が、2016年8月に2020年の東京オリンピックの参加競技として正式に決まった。沖縄はもともと空手修行のため海外から訪れる旅行者が多いのだが、さらにオリンピック競技になったことで、注目度がますます高まっている。そんな中、2017年3月空手発祥の地・沖縄に「沖縄空手会館」が落成した。
ポイント:
・空手発祥の地として、中心的役割を沖縄空手会館が担う
・会館に沖縄空手案内センターを設置し、海外からの空手の問い合わせ窓口に
・オリンピックの追加競技になったことで、海外からの誘致活動にも力をいれる
■沖縄空手会館が3月にオープン、世界への発信拠点になる
空手の始まりには諸説あるが、文献で関連記事が確認できるのは18世紀あたりからだ。明治に至るまで琉球国の士族の武術として伝えられ、廃藩置県後、一般にも普及されるようになった。大正時代に入ると、空手は沖縄県外に紹介され、全国的に広がりをみせることになった。沖縄県では現在も空手が盛んで、現在386の道場がある。
世界的に空手は競技として普及しているが、沖縄では伝統空手・古武道としても受け継がれている。地元では10年以上前から、その空手発祥の地・沖縄を発信するための公的施設が求められていた。そして、2017年3月に県立の「沖縄空手会館」が完成した。この施設は、沖縄空手を独自の文化遺産として保存・継承・発展させ、「空手発祥の地・沖縄」を国内外に発信するための拠点となる。
沖縄空手会館のコンセプトは、人格形成への寄与(礼節の重視)、空手発祥の地・沖縄の発信、県内及び国内外の各流派間の交流、指導者・後継者の育成、空手の真髄の継承、本場沖縄での修行の促進である。
沖縄空手会館の施設には、道場、鍛錬室、研修室、展示施設があり、展示施設の資料室には、空手家を対象とした専門的な情報から、初心者・一般に向けたコンテンツまで幅広く展示されている。また空手の体験コーナーや映像シアターもあり、空手について知ることができる。
施設内には、空手の歴史や各流派の特徴、先人たちをわかりやすく説明する工夫、多言語での案内など、修学旅行生、外国人を意識した展示がされている。また、空手愛好家のためだけではなく、観光施設としての機能も併せ持っているのも魅力だ。
沖縄県では、MICE(※1)の誘致にも力をいれており、その会場として活用することも視野に入れている。なお、運営は沖縄観光コンベンションビューローに委託している。
※1:Meeting(会議・研修・セミナー)、Incentive tour(報奨・招待旅行)、Convention またはConference(大会・学会・国際会議)、Exhibition(展示会)の頭文字をとった造語
■沖縄は、空手発祥の地として世界に訴求していく!
2016年4月に県庁に設置された空手振興課が実施した道場への聞き取り調査によると、海外から空手を習いに来た人の数は、年間で推計5,000人から6,000人にのぼる。また、世界空手連盟によると、競技への登録者数は世界で6千万人、空手愛好家を含めると1億人にものぼると推定される。空手は沖縄が世界に誇る伝統文化となっているのだ。
数年前から個々の道場への海外からの問い合わせも増えている。中にはビジネスや売名が目的のものもあるため、誰でもただ受け入れれば良いというわけにはいかず、個別の問い合わせに対し、個々の道場では多言語、多様なニーズへの対応が難しくなっている。空手振興課はそのような状況の中で、外部との相談窓口として、沖縄空手会館に案内センターを設置し、県内道場とのマッチング機能を担わせている。
空手が東京オリンピックの追加競技に決まったことで、県庁のスポーツ振興課と空手振興課の連携がこれまで以上に密となった。
2017年3月にはニュージーランドのナショナルチームがオリンピックを見据えた合宿を実施した。競技空手は、スポーツ振興課が担当しているので、誘致活動はそこが担う。一方、伝統武術としての空手は空手振興課が担っている。この2つの部署が連携することで、指導者の紹介等、稽古のサポートが可能になり、沖縄で合宿をする意味が出るのだ。
また一方、観光にスポットをあてた空手も登場し始めた。浦添市の「国立劇場おきなわ」では、毎週金曜に様々な演目が上演されており、2016年には空手エンターテインメント“NEO KARATE”が登場した。空手の成り立ちや真髄など、解説を織り交ぜ、ストーリー仕立てになった観客参加型の楽しい舞台となっている。
沖縄では、競技や伝統文化、精神性、さらにはエンターテインメントなど、空手をテーマにした取り組みが広がっている。
今後、ますます空手を目的に沖縄を訪ねる外国人が増えていくことだろう。
取材:やまとごころjp
(インバウンド業界のポータルサイト)
http://www.yamatogokoro.jp/