茨城県のインバウンドが平成27年から突如大ブレイクした。ひたち海浜公園のネモフィラの花畑がきっかけだった。それも1枚の写真が反響を呼んだのだ。県は、情報を素早くキャッチして、ひたち海浜公園を軸にした訪日観光プロモーションに活かしている。地域資源の果樹園と連携させるなど、新しい取り組みに挑戦中だ。
ポイント:
・花の写真がきっかけで有名になったことで方針転換
・観光農園と組み合わせたコースなど訴求ポイントを広げる
茨城県はインバウンドが遅れているエリアだった。
平成26年の4月~9月に茨城県を周遊した海外からの団体ツアーは、わずか70本で、人数にして2,134人という結果だった。(茨城県発表の月別ツアー催行データによる)
平成26年は、年間で訪日外客数が1300万人を超えた上げ潮の年にも関わらず。また県内に国際空港があり、さらに成田空港からアクセスが良いなど、いくつものアドバンテージがあったのだが。
それが、突然、平成27年になると大ブレイクした。同じ4月~9月の結果は、団体ツアーが640本で、人数にして19,873人という結果となった。
930%増という驚異の伸び率だ。
なぜ、これほどに人気となったのだろうか。
きっかけは「花の写真」の口コミだった。
平成24年4月にフェイスブックで「死ぬまでに行きたい!世界の絶景(The breathtaking sights in the world I want to see before I die.)」というコミュニティページに、ひたち海浜公園にある「ネモフィラ」という花畑が投稿され、人気となった。
まずは日本人が訪ねて来るようになり、その後、個人の外国人旅行者が増えた。平成26年の秋ぐらいからだったという。
平成27年のブレイクには、きっかけがあったという。平成27年3月31日にCNNが選んだ日本の絶景31選の1つに、ひたち海浜公園の花畑が採用されたのだ。そこから一気に火が付いた。
ひたち海浜公園とは、開園面積が約200haにも及び、園内には、各所に大規模な花畑がある。年間を通して花が楽しめるのも特徴だ。
春は、水仙、チューリップ、バラ、ポピーなど。
夏は、ヒマワリ、ラベンダー、ジニアなど。
秋は、コスモス、ソバなど。
冬は、蝋梅、梅、寒咲きナノハナなど。
人気となったネモフィラの花畑自体は、10年前からあった。地元から愛されていたが、遠くからの来園者は少なかった。
このネモフィラの花は、4月下旬から5月中旬に咲く、青い花だ。
約3.5haもの広大な“みはらしの丘”一面に、450万本が咲き乱れ、空と海の青と溶け合う風景は、まさに絶景。360度、見渡す限りのブルーの世界は、まるで地上を離れて空中散歩をしているかのようだと評される。
ネモフィラは、一年草で、花が終わると、みはらしの丘では植え替えをする。コキアというライトグリーンの植物になり、これが秋になると真っ赤になる。時期を変えても楽しめる仕掛けになっていて、秋の紅葉を求めて来日した外国人旅行者を喜ばせている。
この状況を受け、茨城県では、インバウンド向けプロモーションの方針転換を図った。それまでは、やはり水戸の偕楽園を軸としたツアーの提案をしてきた。しかし、こちらは海外では歴史好きの人には良いが、一般向けの訴求力に乏しかった。
平成27年の9月に開催された「VISIT JAPAN Travel & MICE Mart 2015」にブース出展した茨城県観光物産協会は、商談において、ひたち海浜公園のことを海外の旅行会社に尋ねたところ、ほとんどが知っていたそうで、茨城県という県名よりも有名になっていた。
最近では、海外の旅行会社やメディア関係の問い合わせが増え、圧倒的にひたち海浜公園が多い。写真の提供は、やはりネモフィラの花の写真だ。
ベトナムの雑誌に掲載されていたツアーの広告には、ゴールデンルートとセットでひたち海浜公園が並ぶほどになっていた。
県は、海外の旅行会社には、花と果物狩りをセットで紹介している。果物狩りは東南アジアや香港では人気のコンテンツになっている。
茨城県内では、イチゴ、メロン、ブルーベリー、梨、ブドウ、柿、ミカンなど、一年中、果物が楽しめる。フラワー・フルーツカレンダーを作成して、現地の旅行会社に配布して、ツアー造成のヒントとして役立ててもらっている。
東京ではホテルが取りにくくなっているが、茨城ではまだ余裕がある。東京や成田空港から高速道路で1時間半程度と、アクセスの利便性も訴求ポイントになる。
公園は国立のため、県の要望がすぐに反映ができないのが課題である。しかし、積極的に情報交換の場を持つようにし、Wi-Fi環境整備、県産品などの土産もの屋の充実を進めてもらっている。今後は、一緒に海外の営業や展示会に出展することも検討している。
茨城県は、ひたち海浜公園を軸にして、いかに周遊してもらうかの取り組みを進めている。そのための受け入れ整備も進め、多言語翻訳サービスを県観光物産協会が窓口となり進めているところである。
ひたち海浜公園のある茨城県という代名詞ができた。「これをきっかけに訴求しやすくなった。」と、県の担当者。世界に勝てるコンテンツがひとつあるだけで、取り組みが広がってくるのだ。
取材:やまとごころjp
(インバウンド業界のポータルサイト)
http://www.yamatogokoro.jp/