北関東は魅力的な観光資源に溢れている。日光のような観光地だけではなく、温泉やアクティビティなど様々な体験を楽しむことができ、食も豊富だ。また、北関東自動車道をはじめとする高速道路や茨城空港など広域交通ネットワークの充実を背景に、北関東三県広域観光推進協議会では、こうした観光資源を活かした誘客に取り組んでいる。その中から、2016年に実施した中国・台湾への誘客プロモーションについて紹介する。
ポイント:
・茨城空港のオープンを機に海外からの誘客にも注力するようになった
・北関東の魅力を相互補完することで新しい観光ルートが実現
・国の地方創生加速化交付金を活用し、モニターツアーを実施
■北関東の地域連携は、茨城空港の開港がきっかけ?
2010年3月に、防衛省・航空自衛隊が管理していた「百里飛行場」が民間向けに共用されることになり、茨城空港が開港した。
茨城空港の周辺となる北関東三県(茨城県、栃木県、群馬県)の人口は約700万人にも上り、北関東自動車道の開通により、空港利用の面で非常に大きなポテンシャルを有していることから、茨城県の声掛けで開港の前年2009年6月に三県の観光課が連携して北関東三県広域観光推進協議会を立ち上げた。
茨城空港は、国内はもとより、海外との交流拡大にも大きな役割を果たすものとして期待されていたが、就航路線の確保とともに課題だったのは、茨城やその周辺県の魅力が外国人だけではなく日本人にも知られていないことだった。
北関東三県広域観光推進協議会は当初、主に外国人観光客の誘客促進を目標としていたが、2010年の国内線(茨城-神戸)就航を契機に国内部会を設置し、観光パンフレットの作成など広域広報活動をしたことにより、日本人利用者数の増加につなげることができた。開港した2010年度の10万人弱から、2014年度には約40万人まで大幅に拡大した。
一方、当初からターゲットとしていた国際線利用者数は、主に茨城空港の海外就航路線を対象に様々な誘客プロモーションを展開したことにより、2015年度に約15万人と2010年度の約11万人から約4割増となった。
2010年度から2013年度は、韓国をターゲットにしたモニターツアーを実施して、現地のメディアや旅行会社を招聘。韓国での観光イベントにも参加して三県の魅力をPRした。
2014年度からはチャーター便の就航可能性が高く誘客が見込める台湾をターゲットに、モニターツアー等を実施しており、さらに2016年度は国の地方創生加速化交付金を活用し、台湾と合わせて中国へのプロモーションを集中的に実施した。
■中国、台湾からのモニターツアーには体験的要素を網羅!
前述の地方創生加速化交付金を活用して実施した事業を紹介する。
まずは「モニターツアー」である。中国の旅行会社とメディアを8月と9月に、台湾の旅行会社とメディアを11月と12月に招請し、三県の魅力を体感してもらうことで誘客促進を図った。
モニターツアーの特徴は、近年、中国人観光客の日本への渡航目的がいわゆる爆買いのような「モノ消費」から、日本らしさの体験など「コト消費」へ移ってきていることを踏まえて観光地だけではなく体験的内容も加えていることである。
具体的には、茨城県ではりんご狩りや笠間の陶芸体験、群馬県では高崎だるま絵付け体験、栃木県では伝統的漁である黒羽のアユのやな漁(※)などである。黒羽では捕ったアユを炭火焼きにして食べる試食体験も実施している。
※:木や竹を並べて、水流をせき止め、手づかみで魚を捕らえる漁法。
栃木県観光交流課によると、昨年、県内で宿泊した中国人観光客は約22,400人で、一昨年より約3,600人増えている。栃木県では更なる増加を目指し、今回のモニターツアーを実施した。この地域を中国の旅行会社に知ってもらうことで、今後のツアー造成に期待している。
さらに、北関東三県を周遊する団体ツアーの造成・催行を補完することを目的とした宿泊助成の実施や、三県を訪れている訪日外国人観光客の観光ルートやニーズ等の把握を目的とした「ニーズ調査」、三県の魅力をPRするためのツール「北関東三県多言語版観光パンフレット」の制作など、誘客促進に取り組んだ。
■花巡りプランなど北関東自動車道を使った周遊が実現
同協議会の担当者によると、3県の連携メリットは大きいと言う。
例えばここ数年、アジアからの団体旅行に人気になっているのが花巡りツアーだ。茨城県のひたち海浜公園にあるネモフィラ、栃木県のあしかがフラワーパークにある藤棚を組み合わせたツアーがある。
また、茨城県には温泉宿が少ないが、一方で栃木県や群馬県には温泉宿が多い。栃木県や群馬県にはないが、茨城県には海や訪日外国人のゲートウェイとなる茨城空港があるなど、お互いに強みと弱みを補完でき、さらに、北関東自動車道によるアクセスの向上で、良いとこ取りが可能になった。さらには、圏央道の開通により成田空港から、北関東各地のアクセスが格段に向上し、成田空港発着の新しいツアーも組み立てやすくなり、さらなる誘客や広域周遊の促進が期待されている。
地域が連携することで、ストーリー性やテーマ性のある観光の組み立ての幅が広がり、メリットが多そうだ。今後、どのような商品開発がされるか楽しみだ。
取材:やまとごころjp
(インバウンド業界のポータルサイト)
http://www.yamatogokoro.jp/