東京の渋谷界隈で開催される『東京レインボープライド』は、2016年で5回目を迎えた。日本のみならず海外からも多くのゲイやレズビアン等、LGBTの人々が集まり、パレードやイベントをする。性的マイノリティーの認知度向上が重要なテーマだ。また、渋谷区では新しい条例を打ち出す等、LGBT市場が熱くなっている。

LGBTを象徴するレインボーカラーを沿道のMODIの屋外スクリーンに映し出す
LGBTを象徴するレインボーカラーを沿道のMODIの屋外スクリーンに映し出す

ポイント:

・多様な性を受け入れる条例を渋谷区が整備
・イベントを通してポテンシャルの大きいLGBT市場を日本に根付かせる

 

■今、世界が注目する「LGBT」とは?

2016年5月8日、渋谷駅ハチ公口前のスクランブル交差点では、LGBTのパレードが華やかに行われ、大いに盛り上がった。

LGBTとは、女性同性愛者(レズビアン、Lesbian)、男性同性愛者(ゲイ、Gay)、両性愛者(バイセクシュアル、Bisexual)、性同一性障害者を含む性別越境者など(トランスジェンダー、Transgender)の欧文頭字をとった総称である。

本来は、別々の属性だが、性的マイノリティーが集まって発言力を高めようという狙いから、LGBTとして結集している。

現在、このLGBTが世界の旅行マーケットで注目されている。その市場規模は、日本国内が約6兆円(※1)、グローバルでは旅行消費のみで2,020億米ドル(※2)だと言われ、ピンク・マネー(pink money)と呼ばれている。この市場を取り込もうと、海外では大きなキャンペーンを行っている企業や観光局が多数存在する。

※1:2015年の電通総研調べ
※2:国際ゲイ&レズビアン旅行協会(IGLTA)による2015年レポート

 

■渋谷区では、LGBTのパレードやイベントが開催されている

日本では、『東京レインボープライド』というLGBTの大きなイベントが毎年5月に渋谷で開催される。海外のLGBTが、その時期に合わせて来日するケースも多い。

5月の1週間を『レインボーウィーク』と呼び、期間中は「パレード」「フェスタ」そして多くの「イベント」が行われる。

「パレード」とは、カラフルに装飾されたフロート(山車)に先導された参加者が、渋谷・原宿を演奏も交えながら行進するものだ。渋谷区役所前を出発し、渋谷駅前のスクランブル交差点を経て、原宿駅代々木公園口を目指す。約3kmの道のりだ。

パレードは代々木公園の会場から公園通りを下って行進する
パレードは代々木公園の会場から公園通りを下って行進する

「フェスタ」は、代々木公園イベント広場&野外ステージで週末の2日間終日行われる。100を超えるブース出展があり、LGBTへの有益な情報、及び一般の方のLGBTの理解を深める情報が揃う。

「イベント」は、東京レインボープライドの主催以外の企画も加わっているのが特徴だ。東京レインボープライドは、近隣のLGBT関連イベントと連携したプラットホームの機能も持つ。2016年は、読書サロン、映画祭、LGBT法律相談会、学校の対応相談、企業にとってのLGBT対応など、様々なテーマについて、60の企画が行われた。

2011年に新しく団体が立ち上がり、2012年に初めて現在の東京レインボープライドが開催され、2016年まで毎年開催されている。第1回目の参加人数は4,500人だったが、2016年の第5回目は、イベント全体で70,500人まで成長した。

 

■海外からの参加も多い東京レインボープライド!

主催の共同代表・杉山文野氏によると、「ボランティアによる運営のため、なかなか思い通りに手が回らないが、本当は、外国語対応もしていきたい」と言う。というのも、現時点で既に外国人の参加者が多いからだ。

ではなぜ、多くの外国人参加者がいるのか。

それは、LGBT同士の海外とのネットワークがあるのが大きいからだという。既に個人同士が国境を超えてつながっている。アジアだけでも6月には韓国で、10月には台湾でLGBTの関連イベントが開催され、日本からも多くの人々が参加しているそうだ。

「東京レインボープライドも、いずれは、アジアを代表するプライド(※3)と言われるレベルまでに持って行きたい」と杉山氏は言う。

※3:LGBTのパレードや展示会等のイベントの総称を指し、性的多様性を強く肯定する意思表示として「プライド」が使われている

また、外国人の参加は、口コミの影響が大きく、日本在住の外国人LGBTの人々から、事前情報の発信が数多く行われたという。
加えて、LGBTはマイノリティー同士ゆえ、お互いの国々のイベントを応援しようというスタンスが強い。そういった機運が手伝って、ここまで盛り上がっていったのだろうと、杉山氏は分析する。

 

■渋谷区がLGBTに対応した条例制定の動き

日本で初めてのプライドパレードは1994年に開催され、以来、新宿や渋谷の街を中心にパレードが行われてきた。
杉山氏は、10年前に表参道の清掃をする「グリーンバード」という活動に参加した。その当時、代表を務めていた長谷部渋谷現区長(当時は渋谷区議会議員)は、当時から、トランスジェンダーである杉山氏とLGBTについて意見交換をしていたこともあり、LGBTについて理解が深い。この二人の出会いがきっかけとなって、同性パートナーシップ条例(正式には『渋谷区男女平等及び多様性社会を推進する条例』)の制定に繋がるわけだが、条例制定の2015年以降、渋谷の街では更にLGBTを歓迎する雰囲気が盛り上りを見せている。

トラックに乗ったゲイダンサーが渋谷でのパレードを盛り上げる
トラックに乗ったゲイダンサーが渋谷でのパレードを盛り上げる

条例では、国際社会及び国内における性的少数者に対する理解を深めるための取組を渋谷区が積極的に理解し、推進することと明記している。それに付随して、渋谷区内のある不動産会社も書類の書式にある「男女」や「夫婦」という欄を改めるなど、独自の動きも出てきたそうだ。

まさに、渋谷区が日本のLGBTの先進エリアを走っているのだ。
LGBTの人たちは、「受け入れられている」という安心感を求めていると杉山氏は言う。だからこそ渋谷区を訪れるLGBTの人たちのリピート率が高まり、地域での消費行動にもつながる可能性が高い。

さて、2016年の東京レインボープライドにおいて、代々木公園野外ステージでは、各国の駐日大使が激励のスピーチを行い、2015年に同性婚がすべての州で合法化されたアメリカのケネディ駐日大使も登壇した。
海外ではLGBTが大きなうねりとなっている。日本も今以上に情報をキャッチアップする努力が必要だ。

取材:やまとごころjp
(インバウンド業界のポータルサイト)
http://www.yamatogokoro.jp/