北海道は、外国人にも人気のデスティネーションだ。広大な自然が魅力なのだが、個人で旅行する場合は、2次交通の課題があった。しかし、ここ最近、人気となっているのがレンタカーでのドライブ旅行だ。多言語のカーナビも登場し、旅行しやすい環境が整ってきた。また、高速道路の利用において、彼らの利便性を高めるサービスも始まっている。

人気の高速道路乗り放題キャンペーンで実際に使用するカード
人気の高速道路乗り放題キャンペーンで実際に使用するカード

ポイント

・レンタカーの可能性を見いだし、安全への啓蒙の課題等を共有する仕組みを構築
・外国人向け高速道路の特別サービスをつくり、人気メニューとなった

■ニーズが高まる外国人のレンタカー利用に、北海道の対応は?

一般社団法人札幌レンタカー協会によると、北海道における外国人のレンタカー利用件数は、2015年度(15年4月~16年3月)が4万2,171件で、2014年度と比較すると約180%増となっている。国・地域別にみると、トップが香港の1万3,802件で、全体の約33%を占め、次いで韓国が4,589件、台湾が4,497件、シンガポールが3,305件と続く。
他にタイ、欧米系の利用も多く、多国籍化が見られるのが特徴だ。

こういった数字等からも分かるように、外国人の旅行客が道内を移動する交通手段として、レンタカー利用が促進されている。

この背景には、2007年4月に、北海道外国人観光客ドライブ観光促進連絡協議会(※1)が設立されたことがある。これにより、レンタカー会社を含めた同士の横のつながりができ、また行政に対しても意見交換ができるようになったのだ。

※1:道や国の官公庁、レンタカー事業者の団体、空港や高速の関係者等が構成メンバーとなっている。

台湾客の運転を可能にする特例措置(※2)や受付などの外国語対応等、この年が、協議会による本格的な取り組みが始まったタイミングと言える。
※2:国際法規上、台湾は通常であれば日本での運転が認められないが、特例措置として2007年9月に、日本国内での運転が可能となった。

北海道のレンタカー会社では、外国人向けに車に貼るステッカーを準備している
北海道のレンタカー会社では、外国人向けに車に貼るステッカーを準備している

また、同協議会では、雪道の安全運転の啓発は欠かせないと考えている。

北海道特有の事情から、下記にあげるように、外国人に安心・安全にドライブ旅行を楽しんでもらうための道独自の調査やノウハウの啓蒙が進んでいったのだ。

■外国人にとってのドライブ観光の課題とは?

国土交通省北海道運輸局が、台湾からの北海道のドライブ観光の経験者にヒアリングしたところ、総じて満足度が高く、再来訪の意向は高かった。一方、ドライブ観光未経験者からは、交通ルールの違いや緊急時の対応について不安があり、ドライブ観光には積極的になれないという意見が多かった。
また、ドライブ観光に必要な情報として「事故や違反」に関するもの、「レンタカー利用」に関するもの、「カーナビに関連する情報」等があがってきた。

調査結果を受けて、北海道運輸局では、「北海道ドライブまるわかりハンドブック」を2009年に発行し、安心・安全なドライブについて啓蒙活動をしている。
例えば、カーナビの使い方、ガソリンスタンドの使い方、冬道運転のヒント、日本の交通ルール等について、5言語(日、英、韓、中繁体、中簡体)で記されている。
項目ごとにWebサイトでダウンロードも可能だ。
http://www.hkd.mlit.go.jp/topics/toukei/chousa/h20keikaku/handbook.html

外国人向けに安全運転のための手引きを配布
外国人向けに安全運転のための手引きを配布

■北海道内の高速道路乗り放題パスが人気に!

一方、NEXCO東日本の北海道エリアでは、高速道路を利用する外国人向けの通行料金割引サービス「Hokkaido Expressway Pass」を2008年から販売している。この「Hokkaido Expressway Pass」を使うと、北海道の高速道路が定額で乗り放題になる。利用日数によって値段が変わり、2日間から14日間までの13種類が揃う。

このパスは、キャンペーンに加盟している17社のレンタカーの店舗で販売されていて、手続きが済むと専用のETCカードを受け取る。ETCで料金所をノンストップで通過できるため、 日本語に不慣れな外国人旅行者でも気軽に利用できる。

NEXCO東日本の北海道支社によると、Hokkaido Expressway Passの販売状況は、飛躍的に伸びているという。
通年販売を実施した2013年度は、約2,400件だったが、翌年の2014年度は、約6,100件となった。レンタカー需要の増加と歩調を合わせるように、さらに、2015年度は約13,900件にまで増加した。この人気を受け、本来は2016年3月で終了の予定だったが、1年間延長することになった。

また、人気があるのは、国際空港がある新千歳空港インターチェンジから観光地の小樽、登別、洞爺湖方面に向かうルートだ。
時期としては、夏の需要が高いそうだ。

■海外プロモーションを展開し、更なるドライブ旅行者の獲得を目指す!

NEXCO東日本の北海道支社は海外プロモーション活動として、JNTOが開催する商談会に参加し、当パスのPRや北海道の観光地の紹介をした。また、高速道路の利用法を紹介した「Hokkaido Drive Guide」の配布などを行った。2015年3月にはマレーシア、2016年6月には韓国での商談会に参加し、個人での北海道旅行に利用してもらうためにアプローチをかけたのだった。

さらに、2016年5月には、北海道銀行が中心となって、台湾のパワーブロガー(温世凱氏)とケーブルテレビスタッフ(東森電視公司)を招聘した。これは、台湾の個人旅行者向けに情報発信を行うもので、そのプロジェクトの中に高速道路を活用してドライブを楽しむという項目も入っていた。

プロモーションによるさらなる需要増は喜ばしいことだが、それに伴って事故によるトラブルも発生する可能性が高くなる。北海道の先進事例を見守っていきたい。

北海道の長い直進の高速道路が、外国人にも人気だ
北海道の長い直進の高速道路が、外国人にも人気だ

取材:やまとごころjp
(インバウンド業界のポータルサイト)
http://www.yamatogokoro.jp/