海外に増えているうどん店。讃岐うどんのルーツである香川県で、本場の味を楽しむ外国人がいる。うどんバス、うどんタクシー、レンタカーを利用してうどん店巡り。外国人向けの冊子を配布してその魅力を知ってもらう。さらに手打ちうどん体験も人気のコンテンツに育っている。

ゆず・おろしぶっかけうどん。夏の人気メニューだ。
ゆず・おろしぶっかけうどん。夏の人気メニューだ。

ポイント:

・うどんを海外で知ってもらう取り組みを重ねる
・インフラを整えてアクセスをサポート
・食べるのはもちろん、体験も盛り込む

 

香川県といえば、うどん県として国内では有名だ。最近では、海外でもうどんの故郷として知られるようになってきた。

香川県は、海外での物産展や旅行博覧会等へ、うどんをテーマに出展。さらに知事によるトップセールスをはじめ、現地メディアや旅行会社への情報(うどんの種類、うどん店等)の提供等を行った。

日本を紹介する展示会「新・日本旅遊節」が、台湾で開催され、香川県からは、「観光ブース」と「物産グルメブース」が出展した。「観光ブース」では観光地や高松・台北線を利用した旅行商品、「物産グルメブース」では本場讃岐うどんの調理販売等を行った。

台湾の博覧会で香川県ではうどんを訴求した
台湾の博覧会で香川県ではうどんを訴求した

シンガポールでは、百貨店担当者や日本食品の輸入業者等に対して、県産品の販路拡大に向けた働きかけをした。さらに現地に出店している香川県のさぬきうどん店を視察し、意見交換を行った。

うどん人気が高まっている背景には、海外でのうどん店の急増がある。

讃岐うどんのチェーン店「丸亀製麺」は、神戸の会社であるが、12の国と地域に出店し、海外でのうどんの知名度に貢献している。海外だけで、すでに134店舗ある。同じく、はなまるうどんも海外進出を果たし、上海では10店舗を超えている。

現地でも讃岐うどんは好評とのことだ。ラーメンに続けと、日本のキラーコンテンツになる勢いだ。

「うどん」というコンテンツを擁し、具体的に香川県を楽しんでもらえるインフラ整備も進んでいる。
高松空港には、ソウル線、上海線、台北線の3つの国際線がある。

2013年3月にチャイナエアラインが高松・台北線を就航させてから、台湾人観光客が増加した。最初は週2便だったのが、週4便に増え、2016年3月には週6便になった。

さらに利用者数が伸びているのが、上海路線である。62.7%増という驚異の伸び率で、2015年には、利用者数が台湾を抜き、1位になっている。

また空港に到着してからのインフラ整備も進む。
「うどんバス」を民間のバス会社が走らせている。2011年からスタートして、有名うどん店と観光地を巡る。観光地を挟み込みながら、うどん屋さんに立ち寄り、ハシゴをする。店ごとの微妙な味の違いを満喫してもらう。半日コースと、週末には丸1日コースがあり、年間利用者の2割程度は外国人だ。年々増加して、外国語の案内も車内に置いてある。

さらに「うどんタクシー」がある。タクシーには目印となるうどん鉢の行灯が乗っている。専任ドライバーは、うどんについての豊富な知識を持つ。

うどんタクシーが、うどんやさんへ案内
うどんタクシーが、うどんやさんへ案内

また、レンタカー需要も伸びている。
韓国からは、2泊3日の日程が多く、香川県内だけをピンポイントでまわる。一方、台北からはもう少し長く、4泊5日程度だ。四国を一周する人や瀬戸内をまわり広島に渡る人等、行動範囲が広い。
いずれにしても香川県内では、うどん店に数軒は立ち寄るという。

このように増加する外国人向けに、香川県では、多言語の観光冊子を作成して配布し、うどんについても言及している。ちなみにこの冊子は、英語、フランス語、韓国語、中国語(繁体字、簡体字)で作られている。

一方で、県観光協会が作成している「うどん県パスポート」(日本人向け)への外国人旅行者からの問合せも多いという。これは、香川県内の対象店舗・施設で使えるクーポンや、プレゼントがもらえるスタンプラリーになっている。

また、最近外国人に人気なのが、「うどん作りの体験」だ。

「こんぴらさん」の愛称で知られる観光地、金刀比羅宮(同県琴平町)。門前町の面影が残る表参道にあるうどん店「中野うどん学校」は、うどん打ち体験ができる店として、台湾や韓国からのツアーの行程に組み込まれている。生地を踏んだり、麺棒で生地を伸ばしたりして楽しみながら作り、最後はできあがったうどんに舌鼓を打つ。所要時間はコースによっても異なり、40分~2時間くらいだ。

うどん作りには、生地を足で何度も踏んで、コシを強くする行程がある。その際に、音楽を聞きながらリズミカルに打つとおいしくなるそうだ。

うどん学校では、音楽に合わせて足で踏んで強いコシを出す
うどん学校では、音楽に合わせて足で踏んで強いコシを出す

「中野うどん学校」では、参加者に応じて曲を変え、出身国の人気の曲を使い、気分をのせる。うどんを打つのはテンポが大事だ。

材料は、粉・塩・水のみで、意外にシンプルだ。あとは自分の腕次第だが、友人が作ったうどんと食べ比べるのも手打ち体験ならではの楽しみだ。

海外でのうどん人気の上昇が、香川県への訪問意欲を高めている。

取材:やまとごころjp
(インバウンド業界のポータルサイト)
http://www.yamatogokoro.jp/