日本料理店が海外で増えている。そんな中、海外の日本食料理人が勉強のため、静岡にやって来る。静岡県は食材が豊富な地域。「ふじのくに『食の都』づくり~“食材の王国から”食の都へ~」というプロジェクトを推進していて、食のブランディングを高めている。外国人の料理人、地元の日本人料理人を巻き込んだ取り組みだ。

県主催の食のアカデミーで、包丁さばきを伝授
県主催の食のアカデミーで、包丁さばきを伝授

ポイント:
・県内の優れた「食」の顕在化を進めた
・海外の日本食の料理人に静岡の良さを知ってもらう
・県庁の取り組みがやがて民間にも波及

日本料理店が海外で増えている。そんな中、海外の日本食料理人が勉強のため、静岡にやって来る。静岡県は食材が豊富な地域。「ふじのくに『食の都』づくり~“食材の王国から”食の都へ~」というプロジェクトを推進していて、食のブランディングを高めている。外国人の料理人、地元の日本人料理人を巻き込んだ取り組みだ。

本文:
静岡県に寿司の勉強をするため海外から料理人がやってくる。
静岡県が主催する「ふじのくに“和の食”国際アカデミー」を外国人向けに2014年から開校し、寿司の技術を外国人に伝える企画をスタートしたのだ。航空券など自費でやってくる。

初年度の2014年は11名の参加があり、2015年は6名となった。香港、マカオ、シンガポール、台湾など、アジアの国々からだ。海外にある静岡県事務所を通して募集をかけた。

この取り組みのきっかけは、日本料理店ですでに仕事をしている人から、本場の味について知りたいという要望があったためだ。実は、修行経験がなく日本食レストランを始めてしまうケースも多く、一度しっかりと勉強したいという。

静岡は、寿司に関わる海産物やわさび、そして茶の生産地なので、本物の味を知る機会をつくれる。
寿司職人として心構え、カウンターでのお客さんとの向き合い方やお茶の淹れ方の他、醤油の製造工程など細かいノウハウを伝授してもらえる。

静岡県では、「ふじのくに『食の都』づくり~“食材の王国から”食の都へ~」というプロジェクトを推進している。スタートしたのは2010年で、新しい知事の方針として打ち出された。その一環としてこの「ふじのくに“和の食”国際アカデミー」プロジェクトがある。
※「ふじのくに『食の都』づくり~“食材の王国から”食の都へ~」URL
http://www.pref.shizuoka.jp/sangyou/sa-110/syoku_miyako.html

静岡県は食材が豊富だ。標高の高い富士山から深海のある駿河湾まで高低差が大きく、気候風土に恵まれている。
生産される農林水産物の数は1,143品目(※)と、全国トップクラスを誇る。農林水産大臣賞の受賞数も常に上位を占めるなど、質・量ともに食材の宝庫だ。

(※)県の調査による。内訳食材(果樹、野菜、作物、茶、畜産物、林産物、水産物):439品目、花:704品目

県民がその特徴に誇りを持てる取り組みとしてスタートしたのだ。

このプロジェクトは、県のマーケティング推進課で企画が練られ、次に、認定制度ができあがった。人材、食材、加工品の3つのジャンルに分かれている。

人材については、地元の料理人や菓子職人に着目した。
地元の食材を良く知り、さらに広めてくれる存在として期待される。彼らを「ふじの国 食の都づくり仕事人」として県が認定するのだ。

また食材そのものにも光をあて、認定をする。こちらは、「しずおか食セレクション」として、地域の特産品や珍しい食材などが選ばれる。

さらに「ふじのくに新商品セレクション」として、加工食品にも注目した。

認定のプロセスは、年に1回、県が募集告知をして、応募のあったものから、外部委員会が認定する。

このプロジェクトにより、県外の大手百貨店で、静岡食品フェアという企画を組んでもらえるようになり、売り上げ増につながっているのは確かだ。
また、「地産地消率も上昇している。」と、県の担当者。さらなる県内での認知度向上のため、レシピ集をつくり、普及活動を継続している。

一方、この食材の王国プロジェクトによって生まれた民間の取り組みがある。「ふじの国 食の都づくり仕事人」が中心となって、外国人向けの短期料理スクールを始めた。

沼津市にあるタビーナ静岡という旅行会社が、タイの旅行会社からの依頼でオリジナルの商品企画を練った。本物の日本食を習うというものである。
そのタイの旅行会社は、これまでウェディング企画を行うなど、ありきたりではないユニークな企画を手掛けてきた。

タビーナ静岡の代表の望月善人氏が知り合いの「ふじの国 食の都づくり仕事人」に声をかけ、食のアカデミーを立ち上げることになった。

2015年6月に第1回目のツアーを実施。バンコクでタイフードレストランを展開しているオーナーと職人が来た。今後はオーストラリアで日本食とタイフードレストランを開店する予定だという。
1週間のプログラムの予定だったが、参加者の予定が3日しか都合がつかず、特別プランを設定。天ぷらをテーマにした。
天ぷらは、天ぷら定食、天丼などアレンジが可能だ。プログラムでは、揚げる方法、粉のまぶしかた、配分からエビのさばき方、保存の仕方、天つゆのつくり方などを伝授した。

休憩時間に食器を見学したいという要望があった。また、店頭にある料理の食品サンプルにも興味を持ち、工房へ案内した。外国人がやって来ると、周辺の波及効果があると、手ごたえを感じた望月氏。

日本食体験ではなく、あくまでもアカデミーにこだわる。ゆくゆくは差別化を図り、現地日本食レストランや現地の料理学校の日本食コースに研修として入れてもらえるよう働きかけをしていきたい。

日本食は春夏秋冬の一年を通したプログラムとして、日本の四季を感じながら習得する事が望ましい。長期の技能習得プログラムなど、可能性は広がる。
しかし、第1回目の6月の参加者は、3日しか時間が取れないなど、現地のニーズと日本から提供したいプログラムのギャップもあった。そのあたりをいかに調整していくかも課題である。

「民間で、食をテーマにした広がりがでるのは、喜ばしいことだ。」と、県の担当者。食に関する推進と露出で、静岡の新しいブランドの確立になるか、長い目で育てる必要がありそうだ。

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取材:やまとごころjp
(インバウンド業界のポータルサイト)
http://www.yamatogokoro.jp/