2016年10月から京都の祇園交番が24時間365日、英語対応可能な交番となった。外国人旅行者の増加に伴い、道案内など町で困り事を抱える外国人も増えており、受け入れ体制にも変化が起こり始めている。交番の国際化に向けた取り組みを追った。

祇園界隈は、昔ながらの街並みが多く残り外国人観光客に人気のエリア
祇園界隈は、昔ながらの街並みが多く残り外国人観光客に人気のエリア

ポイント:

・交番が近隣の外国人対応へのサポートをしている
・外国人が多いエリアには英語対応ができる警官を交番に配置


■交番の国際化に向けた通達が発令?

年間を通して外国人観光客で賑わっている京都。京都市内では2015年、市内の外国人宿泊客数が316万人に上り、市の目標だった300万人を5年前倒しで達成した。

警察が外国人への対応を迫られる場面も急増しており、京都府警に2015年1年間に寄せられた外国人からの110番通報の件数は、2007年に比べて約3倍になっている。110番通報でお世話にならなくても、道に迷う外国人客は少なくない。特に観光スポットが多い東山界隈ではそのようなケースが多い。

外国人旅行者からの質問は、行き方の質問が多い
外国人旅行者からの質問は、行き方の質問が多い

そんな状況が全国で広がる中で、警察庁は2016年4月に全国の警察に対し訪日外国人の急増が予想される2020年に向けて、外国語対応モデル交番(※1)を東京、京都、大阪、愛知、神奈川の重点地域で先行運用するよう通達を出した。

2016年10月、京都府警は通達に基づいて、外国人が多いエリアである東山警察署管内の祇園交番をモデル交番として設置した。これは東京(新宿歌舞伎町、渋谷駅前)に次ぐ設置となった。府警の月別の調査によると、祇園交番での外国人による道案内取り扱いは2016年5月~7月(3か月間)で約1,800人と、府内最多だったという。
また、これに関連して外国人とのコミュニケーションの円滑化や制度の分かりやすさの確保、日本人と外国人旅行者とのトラブル解決などを柱とした国際化推進計画「Welcome Kyoto Project」もまとめた。

2017年の12月下旬にリニューアルオープンしたばかりの祇園交番
2017年の12月下旬にリニューアルオープンしたばかりの祇園交番

※1 外国語対応モデル交番:道案内のほか、外国人旅行者に関わるトラブル解決のサポートを目指す。他のモデル交番は、大阪は関西空港署ターミナル交番、神奈川は鎌倉駅前交番、愛知は名古屋駅西交番である。

■祇園交番には外国人旅行者がひっきりなし

「外国語対応モデル交番」の設置にあたっては、交番の近隣の店舗へも周知にまわったそうだ。お店で、もし外国人のお客さんとの英語対応で困ったことがあれば祇園交番に訪ねてきてもらうように話をした。

祇園交番には英会話能力が高い警察官を3人配置した。24時間365日、英語での対応が可能となっている。

また、英語人材の他に約30カ国語に対応できるタブレットも新たに配備された。英語の話せる警官が留守にしていても対応できるようにするためだ。

祇園交番には翻訳機能があるタブレットが常時置かれている
祇園交番には翻訳機能があるタブレットが常時置かれている

祇園交番には、「外国語対応モデル交番」となった翌月、11月の1カ月間で800人超の外国人が訪れた。そのうちの90%は、すぐ近くの観光スポットのアクセス、さらに次の目的地の行き方などの道案内である。スマートフォンを持っていても、土地勘がないと混乱してしまうことが多いため、道案内に関する質問は依然として多い。
京都府警では迅速な道案内ができるように行き先リストをあらかじめ作っていて、そこにはQRコードも明記されている。外国人旅行者の持っているスマホに読み込ませることが可能だ。
次に多い相談が、落し物についてだ。ここで書類を作成する場合は、国際通訳センター(※2)から応援を頼むという。

※2 国際通訳センター:警察官の語学力向上を目指すとともに、翻訳や通訳を担うため2017年度に京都府警内にできた機関。また、国際事件などの捜査で取り調べの補助を担う指定通訳人(現在約160人)の窓口となっている。指定通訳人には民間人の登録が多く、特別な試験に受かった警察官も一部登録。

■観光地の警察のあり方が変わっていく!

交番の入り口には、英語対応可能な表記が掲示されている
交番の入り口には、英語対応可能な表記が掲示されている

府警は「いつでも誰でも安心して京都に来てもらえる環境を整えたい」としていて、モデル交番の運用に合わせ、警察署や交番、パトカーには順次「POLICE」と英語表記を加えている。
さらに日常会話レベルの英語を話せる警察官を「おもてなし通訳人」とする制度をスタートさせた。約260人が登録されていて、パトロールや警備で街頭に出る際に、英語対応可能なことを意味する「ENGLISH AVAILABLE」と書かれた腕章を着用している。外国人の困りごとなどに積極的に対応するよう心掛けている。
なお、現在の祇園交番は、指定通訳人の警察官(3名)とおもてなし通訳人の警察官(移動等により人数は不定)が混在した体制となっている。

このような交番の国際化は、外国人が多い観光地を中心に進められている。
交番というものが、日本での旅行中における安心と安全の砦になっていくのだろう。

取材:やまとごころjp
(インバウンド業界のポータルサイト)
http://www.yamatogokoro.jp/

 

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