沖縄でダイビングをする外国人観光客数が、ここ数年伸びている。そのため外国語が話せるインストラクターの教育など、受け入れ体制の整備も進む。しかし、認知度はアジアでさえまだまだ低いのが現状だ。資源としては十分戦えるクオリティーがある。世界に挑む現状を追った。
ポイント
・ハローワークと連携した人材育成プランを活かす
・観光素材は豊富だが、認知度が低いのが課題
・ダイビングに特化した展示会出展でダイバーにアピールする
沖縄県では海外からのダイビング需要が、ここ数年伸びているという。
沖縄県宜野湾市にあるダイビング・スクールのマレア・クリエイトの中西氏によると、海外からのダイバーは、おととし2013年あたりから問い合わせが増えてきたという。今年(2015年)は、対前年比で200%増の勢いで、6月の時点で既に前年を上回っている。
香港、台湾からの利用者が多く、体験ダイビング、ライセンス取得、ダイビング旅行などニーズはまちまちだ。
沖縄観光コンベンションビューローの調査によると、2012年の外国人ダイビング客数は年間で3,691人だったところ、2013年の1~9月が5,177人に上り、この時点で前年の年間実績を上回った。(※通年のアンケートがないので、最終的な数値は未定)
実は、2013年から、沖縄のダイビングが伸びているのには理由がある。
その前年から始まった、誘致キャンペーンが実ってきたのだ。
県と沖縄観光コンベンションビューローは外国人ダイバーの誘客を図るため、2012年からアジアや欧米のダイビング博覧会に積極的に出展している。
アジア太平洋地区で最大規模の国際ダイビング旅行博覧会「ダイビング リゾート トラベル エキスポ(以下、DRT EXPO)」や、来場者数5万人規模の「パリ インターナショナル ダイブショー」(フランス)など計12回出展した。
2014年の6月20~22日には、宜野湾市のコンベンションセンターでDRT EXPOを県内で初開催した。
DRT EXPOは過去には香港・上海・シンガポール等で開催されている。
沖縄でDRT EXPOを開催することにより、海外・国内のダイバー、ダイビング事業関係者を招き、沖縄のダイビングの素晴らしさを伝えた。ダイビングディスティネーションとしての沖縄の知名度を国際的にも高めると同時に、高品質の日本マーケットのダイビング器材・水中撮影機材・ダイビングショップのサービス等を広く国内外にアピールした。
これまで沖縄のダイビングは、認知度が低いのが大きな課題であった。
「近隣の台湾や香港では、沖縄でライセンスが取れるのを知らない人が多い。」と、地元の事業者。アジアでは、フィリピン、バリ島、タイなどに遅れを取っていて、ダイビングが盛んな欧州の地中海、北米のカリブ海、オーストラリアのグレードバリアリーフと比較するとなおさらだ。
そもそも、沖縄の海は水の透明度が高いなど、ダイビングスポットとしては、クオリティーが高い。
沖縄の海の印象について、外国人へのアンケートによると、以下の回答があった。
・透明度が高い
・海中生物が豊富
・ガイドダイバーが付く
・地形が良い
・ビーチ周辺の環境整備が進んでいる
そして、人気のスポットは、慶良間諸島、宮古島、八重山諸島が挙げられた。
増加傾向にある外国人ダイバーに対して、外国語対応可能なダイビングショップの数が少なく、外国人ダイバーの受け入れ体制整備が喫緊の課題となってきた。
そこで、外国語ができる県内求職者を対象に、ダイビングのガイドに必要な専門技術や技能習得を行った。ダイビングショップ事業者と連携し、新規雇用を前提に研修を実施したのだ。受講生が最終的に、観光客を案内できるガイドダイバーライセンスや潜水士資格の取得も目指すこととした。
これは、ハローワークで行う雇用対策の基金を活用し、県の文化観光スポーツ部で事業提案を行い事業化されたものだ。ハローワークを通じ、外国語対応可能な県内求職者を採用したダイビングショップがOJT研修等を行うことにより、外国語対応可能なガイドダイバーの育成を行う。結果、この事業では、外国人ダイビングに対応するダイバーが9人採用された。
宜野湾のマレア・クリエイトでは、その制度を利用して女性2名を昨年採用した。いずれも30代前半の日本人だ。
英語対応のスタッフが増えたことで、メールでのやりとり、当日の案内などコミュニケーションがスムーズになった。営業面でも貢献している。
同社では、自社のwebサイト以外では、沖縄ツーリストなど国内にあるランドオペレーターに営業活動をしている。
今後、インバウンドの需要がさらに伸びればスタッフを採用したいが、全体のバランスでインバウンドが多過ぎることにリスクを感じるという。それは、災害や国際政治問題が一度起きると、国内と比較して海外からの観光客の戻りが遅いからだ。
沖縄県リゾートダイビング事業連合会の渕上氏は、沖縄県のダイビング観光の課題は、まず「橋を渡る覚悟」と「自分達の常識を変える」「国内市場と海外市場の違いを知る」といった3つから始めなければならないとコメント。外国人ダイバーの受け入れは、一部に留まり、受入体制整備が遅れている。
欧米のダイバーは、日本のダイバーが求める価値観とはかなり違うというアンケート結果もある。例えば、欧米人は、着替える場所にまったくこだわらず、ポイントに行けば自由にほっといてもらいたい。一方、日本人は、清潔な場所を好み、インストラクターに手取り足取りアドバイスを求める。
マレア・クリエイトの中西氏は、実際に受け入れて思ったことは、外国人ダイバーの受け入れはそれほど敷居が高くないということだ。言葉も事前のコミュニケーションぐらい。それもパターン化できる。
もっと多くの事業者に関わってもらい、海外に知ってもらう取り組みをするべきだと指摘する。
沖縄のダイビングのブランド構築が必要だ。そのために数値化できる指標を検討中だと県の担当者は言う。今後の道筋をどう描くか目が離せない。
取材:やまとごころjp
(インバウンド業界のポータルサイト)
http://www.yamatogokoro.jp/