2014年は、韓国からの訪日外客数が1位から2位になった。韓国からの誘客が他の地域は伸び悩むなか、沖縄は大きく伸ばしているという。そこにはLCC(格安航空便)などダイレクト便の増加が大きく寄与している。短期間で便数を3倍にも伸ばせたのには理由があった。
今回のポイント
1:重点エリアとして総合的にプロモーションしたことが認知度向上に
2:ツーリストのニーズが高まった結果として路線拡大につなげた
那覇空港に到着する国際線の週間運航便数が2014年12月で108便となり、初めて100便を超えた。2013年2月の新国際線ターミナル開業以来、月を追うごとに増加し2014年3月の週49便に比べ倍の便数となった。中でもソウル路線が12便から39便と伸びが大きく、それまで最も割合の高かった台北からの便数(33便)を上回った。
日韓関係の悪化や韓国経済の低迷が、訪日外客数増加の足かせになっていて、2014年は、韓国からの訪日観光客の合計が、1位からついに2位になった。しかし、沖縄への観光客だけは、2014年の後半から急激に伸び始めたのだ。
2014年に沖縄を訪れた外国人客は、対前年比62.2%の大幅増で89万3,500人と過去最高を記録。内訳は、台湾が46.1%増の34万4,100人、韓国が93.9%増の15万5,100人、香港が45.9%増の12万3,000人で、いかに韓国の伸び率が大きいかわかる。
なぜ、沖縄は、これほど韓国からの集客に成功したのだろうか。
沖縄には韓国は最重要市場というぶれないスタンスがあるからだ。
まず路線拡大についていうと、航空路線について、重点市場別の考え方が沖縄にはあり、
市場のプライオリティーで3つのカテゴリーに分けている。
1つ目は、最重要市場。韓国、台湾、中国の3つが該当する。既に路線があり、さらに太くしていこうという戦略だ。
2つ目は、タイ、シンガポール、ロシアなどで、チャーター便を飛ばすことに取り組んでいる市場。
3つ目は、新規の市場だ。欧米など先進国へのアプローチをしている。
最重要市場として取り組んだ3つのエリアのなかでも、韓国からこれほど便数が増えたことは予想以上だったと県の航空便担当者。
期待以上の増便の理由には、韓国へのプロモーションが実り、認知度が向上したことがあるという。いくらインセンティブをつけても、現地の方々に、沖縄へ行きたいというニーズが高まらなければ、路線増にはつながらないのだ。
では、どうやってニーズを高めたのか。
沖縄県には、インバウンドの4つの施策がある。
1. 路線誘致のためのインセンティブ(報奨金)
海外の空港から沖縄県内空港へ入る国際定期便新規就航の促進、路線活性化を目的とし、 助成対象入域客数に応じて航空会社に助成金を交付している。新規就航の場合、搭乗者数の50%までを上限として1人につき3,000円を助成している。既存便の場合は、活性化を目的に、増加率に応じて、増加分一人につき1,000円から2,000円の助成となる。
2. 旅行客へのプロモーション活動
沖縄を知ってもらい、ブランディングを高める狙いがある。
「Be. OKINAWA」というキャンペーンを展開している。
韓国語HPも運営するほか、リアルタイムで情報を拡散するにはSNSが必要だ。「いいね!」ボタンで、景品プレゼントをして、ファン数を増やす取り組みをしている。
フェイスブックでは、韓国語だけではなく、できるだけ多言語で沖縄の情報を海外に露出している。
3. 現地旅行業界向けのプロモーション
主要な旅行博に出展し、ファムツアー(旅行業界やメディアを招聘する視察ツアー)、
KOTFA(ソウルで毎年開催される一般向け旅行フェア)やBITF(釜山で毎年開催される一般向け旅行フェア)をはじめ、ソウルほか地方で開催される旅行展示会すべてに出展した。最近では、旅行会社自体が主催する展示会もあり、ハナツアー(韓国で団体訪日が多い旅行会社)の独自のフェア、モードツアー(韓国の業界2位の旅行会社)の独自の旅行展示会にも参加した。
おかげで、数年前から知名度はあがってきているという。
また、沖縄観光の商品を造成してもらい、現地で広告をする際には、広告費の半額を上限に補助を実施している。
4. 受け入れ環境整備
コールセンターを開設して、多言語での問い合わせ対応をする。またWi-fiスポットの支援もしている。
上記の4つの施策を中心にインバウンドに取り組んでいる。
沖縄に観光で来る外国人の比率は、日本人と比べ、5年前は3%に過ぎなかったが、2014年は10%にもなった。
特に韓国向けには、知名度の向上に力を入れている。
若者向けPV(プロモーションビデオ)を制作した。韓国人女優(元アイドル)を起用して、PVを作成。ネットで拡散させた。
【3月31日まで】「Be.Okinawa with Park Soo Jin」公開中!
また、韓国プロ野球の春季キャンプ誘致も行い、今年は韓国6球団が沖縄キャンプを実施し、韓国のスポーツ新聞などにも取り上げてもらっている。
次に韓国関連ドラマの沖縄ロケ誘致がある。
すぐに効果が出ないこともあれば、作品が思ったほどヒットしないこともあり、効果測定が非常に難しいが、韓国の作品を毎年1本は誘致するようにしているという。宿泊費、移動費を補助する。
こちらの要望に柔軟な対応が可能で、脚本を途中で変更してもらうこともできる。例えば、力を入れているリゾートウェディングのPRのためにチャペルを撮影に入れ、今後、韓国人の沖縄でのウェディングが増えることを期待。
以下、近年のロケ成功事例だ。
2011年度 | ○ドラマ「女の香り」 | 韓国SBS放送局 放送視聴率20%。ロケ地チャペルで韓国人カップルが挙式を行った。 |
2013年度 | ○映画「プライベートアイランド」 | 韓国全国23スクリーン、ソウル市8スクリーン、合計31スクリーンで公開、IPTV VOD モバイルでも配信 オール石垣ロケ |
2014年度 | ○ドラマ「All Right Love(大丈夫、愛だよ)」 | 韓国SBS 平均視聴率約10% 中国ネットアクセス数1位獲得 |
韓国に沖縄県事務所を置き、そこには韓国人スタッフがいる。旅行会社、航空会社、さらにメディア等を営業してまわっている。情報交換しながら、韓国のニーズを拾い、さらに沖縄のニーズをマッチング。結果として航空路線拡大につなげてきた。
沖縄の知名度向上に努める一方、航空路線拡大に取り組むという両輪の考え方が、集客増加につながっていったといえる。
取材:やまとごころjp
(インバウンド業界のポータルサイト)
http://www.yamatogokoro.jp/