高山は伝統的な街並が特徴で、特に欧米人にはエキゾチックに映る。ミシュランガイドブックでも日本の行くべきところとして紹介され、ディープな日本を体験できるエリアとして人気が高い。山奥の秘境というハンディをいかにして乗り越えていったのか、また、その魅力的町づくりは、いかにして進められたかを探った。

飛騨高山の古い街並が残る一角
飛騨高山の古い街並が残る一角

<今回のポイント>
1:バリアフリーな街づくりが、結果、外国人にも優しくなった
2:補助制度を活用して受け入れ整備が促進された
3:近隣との連携が、山間の町へと足を運ぶ要因に

高山は、人口9万人に対し、外国人観光客を28万人以上を受け入れる。
だが一朝一夕に、これほどの国際観光都市なったわけではない。
高山市の外国人に対する『おもてなし』の取り組みは、昭和61年、飛騨地域の1市19町村が国の『国際観光モデル地区』に指定され、同年『国際観光都市宣言』を行ったのがきっかけの一つとされている。
この時に初めて本格的な英語のパンフレットを整備したのだ。

高山市ほど多言語で情報発信をしている自治体は少ないだろう。
散策マップは、10言語あり、英語、中国語(簡、繁)、韓国語、仏語、独語、スペイン語、伊語、タイ語、ヘブライ語だ。
観光パンフレットは、6言語あり、英語、中国語(簡、繁)、韓国語、仏語、タイ語だ。
ホームページは、 11言語あり、英語、中国語(簡、繁)、韓国語、仏語、独語、スペイン語、ポルトガル語、伊語、露語、タイ語だ。

いかに、多くの国から高山を訪ねてくるかが想像される。

高山市が観光に力を入れ始めた際に、外国人だけをターゲットにしたわけではない。
団体旅行から個人旅行に変化が進み、少子高齢化の流れを考慮した。そこで年配者や障がい者が一人でも自由に散策できる街を目指すという方針を立てた。その一部に外国人対応がある。
外国人は、情報やコミュニケーションの『バリア』があり、初めてに日本を訪れた際に日本語しかない案内に戸惑ってしまう。

平成8年に「バリアフリー観光」というコンセプトが固まった。

誰もがバリアフリーという発想で、一人でも安心して散策できる町づくりを目指した。
「来て良し、住んで良し」
という考え方だ。住んでいる人が我が町を自慢できる街づくりがベースにある。

同年、モニターツアーを実施し、年配者や障がい者と一緒に外国人にも町の中を歩いてもらい、問題点をフィードバックしてもらった。言語の違いによる情報入手が、いかに困難かが顕在化した。外国人目線での問題点の洗い出しだ。

このツアーの実施により、高山市民が日常思いもつかないような『バリア』を彼らから教わったという。それを修正することで、誰もが「ひとり歩きできる町」を構築できた。

その成果が、市のホームページの多言語化につながった。
また通りの看板がわかりにくいとの声が多かったので、さっそく案内表示を導入することになったものの、必要最低限におさえることになった。実際、指摘通りにすべて対応すると、看板だらけになり、景観が悪くなると考えたからだ。高山の景観の魅力というものを失うと本末転倒になる。

平成12年には、おもてなし講習会を実施した。市内事業者が「もてなしのヒント」として活用できる、『海外訪客おもてなし365日』を発行し、その際に配布した。
冊子があることによって、お店も安心感を持てたという。外国人旅行者の目的や嗜好、予約や食事などのサービス、外国人の生活習慣や簡単なコミュニケーションの方法が掲載され、事前準備につながった。

平成21年は、インバウンドに対してより積極的になった。

一つは、高山を訪問する外国人が増えるに従いそのニーズが多様化したため、更に新しい考え方や手法を加える冊子が必要となり、『もてなしの匠心得帳』を発行したのだ。「また来たい」と思われる印象を更に高める狙いがある。

もう一つは、実際に外国人が増えてきて、ビジネスチャンスと考えた受け入れ事業者もでてきた。そのため、多言語化に要した経費の2/3、上限20万円を補助する「高山おもてなし国際化促進事業補助金」を制定した。メニューや屋内看板の多言語化につながった。

最近では、漫画を用いた蕎麦の食べ方説明というパンフレットを作製した事業者もあり、英語、中国語(繁体字)、韓国語、フランス語で表現されている。

平成23年、高山市海外戦略室(平成27年4月1日からは海外戦略課)を設置。
「海外戦略ビジョン」を策定し、『誘客』『販売』『交流』の三位一体の戦略を進めている。

その中で、市内の整備だけにとどまらず、高山では点を線に変える独自のプロモーションを展開している。

ニューヨークでの商談会に参加した際、白川郷、長野県の松本、石川県の金沢の観光パンフレットも一緒に持っていった。外国人にピンポイントで足を運んでもらうのは、難しいが、魅力的な観光地をつなぐコースになっていると、がぜん興味がわいてくるようだ。

名古屋から電車で2時間半もかかり、そこだけを訪ねるのは効率的ではない。外国人にとっては、できれば一筆書きで周遊できる効率的なルートが理想。点を線に変えることが大切だ。
近隣の観光地も紹介して、そのルートをプレゼンテーションすることが有効だ。

山間ぶにある高山は特にアクセスのハンディがあった。いかにして、呼び込むか。
点を線に変えたプロモーションが功を奏している。
市内のバリアフリー化だけではなく、市外との連携によるバリアフリー化にも努めている。観光案内所では、近隣へのアクセスや時刻など詳細を提供するのもその一環だ。

パンフ写真(6言語7種)
パンフ写真(6言語7種)
ぶらりマップ写真(10言語)
ぶらりマップ写真(10言語)

外国人を招いたモニターツアー
外国人を招いたモニターツアー(プライバシーに配慮しています)

 


取材:やまとごころjp
(インバウンド業界のポータルサイト)
http://www.yamatogokoro.jp/