武将をテーマとしたインバウンドで、名古屋が天下取りに名乗りをあげた。海外では「名古屋」という地名よりも、「武士」や「忍者」という単語の知名度の方が高い。2016年10月には、名古屋城で活躍中の名古屋おもてなし武将隊の一人、“徳川家康”がニューヨークに渡り、武将の聖地としての名古屋の魅力を英語でPRした。名古屋では2009年に始まった名古屋城本丸御殿の木造復元、2017年5月に始まった天守閣の木造復元への動きなど、武将に関わる動きに注目だ。

織田信長を中心に勢ぞろいの名古屋武将隊
織田信長を中心に勢ぞろいの名古屋武将隊

ポイント:

・多くの戦国武将を輩出した武将の聖地としての名古屋を海外にアピール
・武将隊の名古屋城での活動に外国人向けの対応も加わった


■名古屋城に甲冑姿の武将が出現、観光客に大人気

名古屋おもてなし武将隊とは、2009年に武将の聖地・名古屋をPRするために結成された組織だ。武将隊の運営会社である株式会社三晃社が、名古屋城を盛り上げる企画として、名古屋市に提案したのが結成のきっかけであった。
初年度は、名古屋市の緊急雇用創出事業予算を使った委託事業としてスタートした。当時は単年度での事業を予定していたが、地域のイベントへの招聘など予想以上に反響が大きく、2010年、2011年度も継続して事業が実施されることとなった。さらに2012年からはイベント等で活動資金を賄えるようになったため、運営会社の自主運営に切り替わった。

武将の人材確保はハローワークのほか、地元の役者への声かけに始まり、オーディションによって、織田信長、豊臣秀吉、徳川家康ら有名戦国武将6人と、陣笠隊4人が決定した。初期メンバーから役者の入れ替わりはあるものの、変わらず10人体制で運営している。

前田慶次は武を磨き、美を極めた自由人だった
前田慶次は武を磨き、美を極めた自由人だった

 

武将隊は名古屋の観光PR活動を目的に、名古屋城内で観光案内や写真撮影、演武を行うほか、イベント、メディアに出演して名古屋の魅力を伝えている。
やはり、城内で甲冑姿をしていると観光客が集まる。お城見学の演出に貢献している。

名古屋城を管理運営する一般社団法人名古屋城振興協会によると、外国人の入場者数の統計はないが、ここ数年変わってきたことは、名古屋城に外国人が増加した結果、名古屋おもてなし武将隊でも英語対応に力を入れるようになったことだ。

3年ほど前から、城内放送に日本語のほか、英語も加えるようになった。また、2017年9月よりはじまった名古屋城本丸御殿の音声案内は4言語(日本語・英語・中国語・韓国語)対応しており、日本語版と英語版は、武将隊の“徳川家康”による音声である。

名古屋おもてなし武将隊によると、名古屋城を訪れる欧米からの観光客は、武将や城についての質問をするという。“徳川家康”は、よくある質問には英語でしっかり説明できるよう準備をしている。また、ほかの武将たちは、挨拶や簡単な受け答えはできるよう、英会話を学ぶよう心掛けている。

名古屋城で演武を観光客に披露するメンバー
名古屋城で演武を観光客に披露するメンバー

■英語が堪能な現代の“徳川家康”、ニューヨークに渡り武士道を伝える

名古屋おもてなし武将隊の一人“徳川家康”が2016年10月ニューヨークに降り立った。目的は、タイムズスクエアやコロンビア大学、現地企業などを訪ねて、武士道を伝え、さらに戦国武将を多く輩出した武将の聖地としての名古屋の魅力を発信することであった。

欧米では禅(ZEN)への関心が高いこともあり、PRの際には禅に関連の深い戦国武将の精神性(例えば武士道)についての説明から始めることで、現地の人の興味を引きつけることができた。コロンビア大学で話をする機会をもらった際には、武士道にまつわる話のほか、家康の政治手腕についても生涯を振り返りながら語った。幼少時代の13年に及ぶ人質生活や戦での敗退などに長い間耐え忍んできた家康が、周囲から認められ、最後に江戸幕府という平安な時代を手にすることができた、という話は家康の生涯とその精神性をよく表しているという意味で受けがよかった。

なお、今回の遠征は、地域の魅力を世界発信する人材育成を目的として中小企業庁が実施した地域活性化事業「ふるさとグローバルプロデューサー育成支援事業」の一環として実施された。

徳川家康が、ニューヨークの街を甲冑姿で行脚する
徳川家康が、ニューヨークの街を甲冑姿で行脚する

 

■武将だけでない、忍者隊も登場し名古屋を盛り上げる!

武将の聖地として盛り上がりつつある名古屋では、名古屋城天守閣を木造に再建するプランが進行中だ。
総事業費は約470億~500億円。完成は、東京五輪・パラリンピックの開催後の2022年7月を目標とした。
河村たかし市長は2017年3月の記者会見で、「寸分違わぬ復元ができる。400年たって名古屋城がよみがえる。全体の経済効果も大きい。世界中から観光客がおいでになる」と語った。実現できれば、武将の聖地に相応しい環境になる。

またオーストラリア出身で名古屋在住の人気DJクリス・グレンさんは、日本のお城マニアとしても有名だ。彼は日本のお城の魅力を海外に届けている。再建されれば、注目度は増すだろう。

さて、名古屋おもてなし武将隊の関連グループとして「徳川家康と服部半蔵忍者隊」があり、メンバーの中には外国人の忍者もいる。
「忍ばないスターな忍者探します」というキャッチコピーで、フルタイム月給制の人材を2016年に募集したところ、海外メディアの目にとまり、世界に報道された。その結果、200人を超える応募者のうち半数以上が外国人で、最終的に1人の外国人忍者が誕生した。応募した外国人の中には日本在住者だけでなく海外在住者も含まれていた。外国人の忍者に対する憧れが強いことが分かる。
現在この忍者隊は、名古屋城での観光案内や手裏剣などのパフォーマンスのほか、中部国際空港でも活動をしている。

名古屋では武将をテーマにしたインバウンドが、今後ますます発展するだろう。海外では名古屋という知名度は低いが、武士や忍者なら知られている。その聖地としての天下取りに名古屋が邁進中だ。

 

取材:やまとごころjp
(インバウンド業界のポータルサイト)
http://www.yamatogokoro.jp/

コメントを残す