四万十市は、四国の南西部に位置する。そこにやってくる外国人旅行者が増えているという。四万十川がキラーコンテンツなのだが、ターゲットに応じた受入を整えているのが特徴だ。欧米人にはアドベンチャー、台湾人にはロケ地巡りだ。さらに新しい施策も進めているという。

新しく着物体験プログラムが始まり体験会を実施
新しく着物体験プログラムが始まり体験会を実施

 

ポイント:

・四万十川の清流を楽しむカヤックが欧米人に人気となっている

・高松空港を起点に四国をまわる台湾人が急増中

・四万十川が登場するドラマのロケ地をレンタサイクルでまわる



■四万十川の清流をカヤックで楽しむ外国人が増加中!

高知県四万十市を訪ねる外国人観光客が増えている。

2015年に四万十市観光協会の案内所を利用した外国人客数は1,971人と、前年比48.2%増となっている。集計を始めた2011年は214人だったことから、当時の約9倍にまで伸びている。

四万十市の魅力といえば、やはり四万十川の清流だろう。日本最後の清流とも言われ、その四万十川の中流域がカヌー・カヤックのメッカになっている。

上流部の家地川ダムから下流域にかけては、ダムや堰堤がまったくなく、3〜4泊のキャンプをしながら長距離カヌーツーリングすることも可能だ。アドベンチャー的要素の高い体験を楽しむことができる。

四万十川でカヤックに挑戦する外国人も多い
四万十川でカヤックに挑戦する外国人も多い

ロンリープラネット等、海外のガイドブックには、四国は、アジアの最後の秘境として紹介されていて、四万十川のカヌー体験のほか、徳島県三好市にある大歩危(おおぼけ)のリバーラフティングや祖谷(いや)の古民家や吊り橋など、欧米人を中心に人気が高まっている。

欧米人は、アクティビティを好み、四万十川近辺でカヤックのほか、キャンプをする人も珍しくないという。

市内には、カヌーの会社が5社ほどあり、観光協会では、数の多い欧米の方向けに英語対応の説明書を作成して各社に配布している。内容としては、会話集はスタッフ向けに、そしてカヤックの乗り方などの基本情報はユーザー向けのパンフレットになっている。

■台湾からの誘客の成功は、2つの理由があった

一方、外国人の伸び率を押し上げている国・地域別でいうと、台湾からの旅行者が最も高いという。2015年は806人と2011年(35人)の約23倍に増え、全体の約4割を占める。四万十市の商工観光課の担当者によると、台湾からの観光客が増加した理由は2つあるという。

1つは、高松空港の影響だ。台湾路線が高松空港と結ばれ、四国へのアプローチが簡単になった。もともと日本観光のリピーターが多いので、新しいディスティネーションを求めていた。そして四万十市が四国周遊の1地点として選ばれたのだ。

2013年に週2便で就航し、2014年には週4便、2016年3月からは週6便に増えている。

さらに、四国を巡る鉄道の利便性も上がっている。2012年に発売した外国人対象の「オール四国レールパス」は、JRや土佐くろしお鉄道など四国内6社の路線を利用することができる。2015年度には9,706枚売れ、2年前の約3倍の数が売れたのだ。

2つ目の理由が、ドラマのロケ地となったことが影響しているという。

2012年にフジテレビ系で放映された「遅咲きのヒマワリ~ボクの人生、リニューアル~」(※1)というドラマが、四万十市を舞台にしている。

※1:将来への漠然とした夢と不安を持ちながらも、四万十市で暮らす男女7人の若者たちを描いたドラマ。

そのドラマが、翌年の2013年に台湾でも放映された。そこから知名度が一気にあがった。

また、四万十市もこれをチャンスにとプロモーションを仕掛けたのも功を奏したのだろう。例えば、台湾の視聴者プレゼントの景品として、ドラマで出演者らが着用していた「たの四万十」Tシャツと、雑貨などを詰め込んだ「玉姫様の小箱」をセットにして提供した。また、高知県と四万十市は、その視聴者キャンペーンの周知のため、別に現地CMの放送も依頼した。

沈下橋でレンタルサイクルを押して渡る旅行者
沈下橋でレンタルサイクルを押して渡る旅行者

実際に、台湾からの観光客が増えると、レンタサイクルのニーズが高まったと観光協会の担当者はいう。ロケ地である沈下橋など、四万十川沿いの景観を自転車に乗って楽しんでいるという。

この動きに呼応して四万十市では、ふるさと納税でサイクリングコースの整備をして、走りやすいような環境作りを進めている。周辺では、3月に1000万本が咲く菜の花畑もあり、ロケ地の途中にも注目してもらいたいそうだ。

ちなみに、観光協会は欧米人向けにマウンテンバイク、ロケ地巡りにはシティーサイクルという想定で2種類のレンタサイクルを用意しているという。

■四万十市のさらなる魅力を掘り起こし、次の一手を!

しかし、2014年をピークに、翌年からロケ地巡りの影響は落ち着いている。

そこで、2015年に観光協会と四万十市では新しい企画を打ち出し、試行錯誤している段階だ。

四万十市に残る小京都の街並みを浴衣で楽しんでもらおうと貸出サービスを企画した。外国人限定というわけではなく、広く旅行者に楽しんでもらいたいという。

さらに、地域の食も訴求ポイントになりうると考えている。四万十川での川魚漁が盛んなのだ。英語と中国語に対応した冊子「簡単会話集」を作り、外国人にスムーズに接客できるよう、市内の飲食店などに配布を始めたところだ。

これらについてはいずれもターゲットをあえて絞り込んでいないのが現状だ。反応をみながら、次の打ち手を検討していくという。

試行錯誤していく努力が、インバウンドを取り込む糧となっていくことだろう。今後の動きに注目していきたい。

四万十川は最後の清流といわれ、日本を代表する河川だ
四万十川は最後の清流といわれ、日本を代表する河川だ

取材:やまとごころjp
(インバウンド業界のポータルサイト)
http://www.yamatogokoro.jp/