広島は、原爆ドームや宮島など、外国人に人気の観光地が多い。さらに最近では、グルメとして広島のお好み焼も人気になっているのだ。一方で増加する外国人観光客に対応するためのお助けツールが、「お好み焼アカデミー」という組織が中心になって作成された。ラーメンに続き、B級グルメの国際化が進んでいる。
ポイント
・お好み焼を外国人に楽しんでもらえるツールをお店に配布
・お好み焼の料理教室を、英語で体験できる取り組みが好評
■広島のご当地グルメとして、お好み焼はキラーコンテンツ!
広島を代表するグルメといえば、お好み焼だ。ソースの香ばしさが日本人のみならず、外国人にも人気になっているという。
広島のお好み焼の海外プロモーションについては、県の観光課の国際プロモーショングループが担当している。海外での商談会や展示会で使用するパンフレットには、必ずおすすめグルメとしてお好み焼を掲載するそうだ。広島には欠かせないキラーコンテンツである。
また、そのパンフレットでは、広島のお好み焼のストーリー性についても言及している。実は、お好み焼は、被爆からの復興を象徴する食べ物だという。終戦直後、人々の空腹を満たす食べ物として、アメリカから支給された小麦粉を使い、屋台から広まっていった。最初はクレープのようなものだったが、工夫が重ねられ、現在の姿に発展したのだ。
■外国人観光客の増加に困っているお好み焼のお店に便利なツールを提供
昨今、広島県を訪問する外国人の数が増え、それに伴ってお好み焼屋を訪れる人数も増加している。その結果、外国人にどのように対応をすればいいのか分からないというお店からの相談が、「お好み焼アカデミー」という組織に寄せられている。
お好み焼アカデミーとは、オタフクソース株式会社や広島の学識経験者などでつくる一般財団法人だ。設立は2014年4月で、お好み焼の食文化を研究し、国内外に広めることが目的だ。広島のお好み焼の歴史や材料を紹介する英語サイトも開設し、現在お好み焼店を中心に全国129店(広島県で95店)のほか、ソースや麺のメーカーなどが入会している。
お好み焼のお店の方々の中には、英語への苦手意識が強い方も多い。そこで、現場で役立つコミュニケーションツールが求められていた。
その後、2016年3月、お好み焼アカデミーがお店の方々にヒアリングした上で外国人対応のツールを作成した。コミュニケーションシートという名前だ。
シートには基本的なお好み焼の材料を記載し、中華麺かうどんか、チーズや魚介類などのトッピングを選ぶという注文の流れをイラストと英語、日本語で解説している。アレルギー情報も記載した。
また、お好み焼の種類の解説、お好み焼の分解図も英語で説明している。
持ち方や切り方など、へらを使った食べ方の解説も載せた。
これにより、英語が苦手な店員でも指さしで外国人に対応できる
シートは、A4の見開きというコンパクトサイズになっていて、カウンターでも扱いやすい。
これでお好み焼の注文の仕方や食べ方を英語で理解してもらえると、お好み焼屋の主人たちからは好評とのことだ。
また、ポスターやステッカーなどもアカデミー会員店舗を中心に配布した。これらを店頭に貼ってもらうことで、その店が英語対応ができることを分かった上で、安心して入店してもらえるというわけだ。
お好み焼という日本独特な食べ物を実際に体験して、理解した上で、母国に思い出として持ち帰ってもらいたいと、お好み焼アカデミーでは考えている。
お好み焼アカデミーでは、県と一緒に作成した食べ歩きマップの英語版作成も検討するなど、お好み焼の認知度向上を目指している。
■お好み焼のソース工場見学、料理教室等、外国人観光客にも対応
一方、お好み焼アカデミーの賛助会員として活動をしているオタフクソースでは、SNSでソース工場見学ツアーが紹介され、外国人客も増えているそうだ。担当部署には数名の英語対応が可能なスタッフがいる。
団体での参加が多く、要所ごとにスピーカーから英語のアナウンスを流す案内も行っている。
また、外国人も参加できる有料の料理教室がある。定員は26名で、教室では日本人と外国人、団体客や個人客が混在する。
教室の内容は、お好み焼を日本語と英語で同時に解説しながら、実際に作ってみるというものだ。
思い出に写真を撮って、SNSにアップする人も多く、口コミで評判が広がり、参加者が増えているのだという。
さらに、オタフクソースでは、ハラル対応のお好み焼ソース開発を目指している。
試作のソースを使い広島大学のイスラム教徒の留学生向けに、鶏肉を使ったお好み焼を提供したところ、大変好評で、お好み焼の可能性に手ごたえを感じたという。
しかしながら、国内でのハラルソース作りは困難であるため、マレーシアの会社と提携して、イスラム法にのっとったソースの開発をしている。今後は日本に逆輸入する予定で、イスラム教徒にもお好み焼を楽しんでもらいたいと考えている。2017年の完成を予定している。
広島の地名は知られているが、今後は「お好み焼を楽しめる場所」としても、海外での認知度があがりそうだ。そのことを支える存在として「お好み焼アカデミー」の存在がありがたいと県の観光課のスタッフは語る。
取材:やまとごころjp
(インバウンド業界のポータルサイト)
http://www.yamatogokoro.jp/